オシムジャパン 今月中にも誕生

 W杯ドイツ大会で日本代表を指揮したジーコ監督(53)の後任監督に千葉のイビチャ・オシム監督(65)が就任することが決定的であることが23日、明らかになった。すでに日本サッカー協会接触し、オシム監督自身も就任に前向きであることから、今月中にも最終結論を出す見通しだ。22日(日本時間23日早朝)のブラジル戦で1―4と完敗し1次リーグ敗退が決定した日本は、24日に帰国。2010年南アフリカ大会への立て直しは、90年W杯イタリア大会で旧ユーゴスラビアを8強に導いた名将に託される。

 ジーコ監督が目標に掲げた優勝にはるか遠く、日本の1次リーグ敗退が決まった。2010年の南アフリカ大会へは若手の人材育成と強化が急務となるが、その重責は、指導者として国内外から絶大な信頼を寄せられている名将オシム監督の手に委ねられることになりそうだ。

 日本サッカー協会関係者によると、5月6日の千葉―横浜戦が行われた日産スタジアムで協会幹部が千葉側に正式オファー。5月下旬には千葉県内のホテルでオシム監督本人と極秘接触し、直接申し入れたという。W杯1次予選最中の04年4月にジーコ監督解任騒動が起こった際も就任を打診しており、今回のオファーは2度目。オフで欧州滞在中のオシム監督とは今も接触を続けている。18日のクロアチア戦の後には、田嶋幸三技術委員長がオーストリアにあるオシム監督の自宅を訪問。すでに体制や予算など具体的な話も交わされている。4月から後任人事に着手していた川淵キャプテンは、ブラジル戦後「初めから1人に的を絞ってやっている」と説明したが、その継続して交渉を続けてきた相手こそがオシム監督だ。

 来日4年目のオシム監督は、かねて日本代表への興味を示しており、今回のオファーについても周囲には「光栄なこと」と漏らすなど前向きだという。ただ、千葉がリーグ5位と優勝を狙える位置にいるため、年内は代表とクラブの兼任を希望。協会側もその条件に応じる方向で調整している。川淵キャプテンは「今月中か来月早々に発表できる」と明言。オシム監督は29日に再来日予定で、それまでに結論を出すことになりそうだ。

 90年W杯イタリア大会で旧ユーゴスラビアを8強に導き、オーストリアのシュトルム・グラーツでは欧州チャンピオンズリーグに3度出場。03年からは千葉(当時は市原)を率いて、残留争いの常連を1年目から優勝争いができるチームに変えた。「考えながら走るサッカー」を浸透させ、昨年はナビスコ杯で優勝。日本代表のFW巻やMF阿部、ユースで活躍したMF水野、DF水本ら若手選手を育ててきた。最も心配される65歳という年齢も、現在は定期的に健康診断を受けており健康面に不安はない。

 ウイットに富んだ「オシム語録」でも有名な指揮官は「日本独自のサッカーをしなくてはいけない」と語ったことがある。不完全燃焼のまま終了したジーコ体制から、どのように強化を図るのか。オシムジャパンの誕生は秒読み段階となった。

 ◆イビチャ・オシム(Ivica Osim)1941年5月6日、サラエボ出身。ゼレツニカル・サラエボストラスブールなどで攻撃的MFとして活躍し、旧ユーゴスラビア代表で16試合8得点。64年東京五輪で日本と対戦し、2得点を挙げた。78年から指導者に転向。86年に旧ユーゴの監督に就任。94年から、わずか12人でスタートしたシュトルム・グラーツを指揮し、欧州CL出場を果たした。05年にナビスコ杯で優勝。会見などで「ライオンに襲われたうさぎが肉離れしますか?」などの名言を生む「オシム語録」が人気。1メートル91、90キロ。